香港国際空港

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第一章 イギリス
さて、今後かなりの数の国について読んでいってもらうにあたって、始めるのはこの国からしかないでしょう。パスポートを確認してみると、2008年9月5日に日本を出国し、2010年4月12日に帰国していました。一時帰国した時期があるとはいえ、本格的に生活の拠点を移した584日間の滞在。思い出も枚挙に遑がなく、もちろん、良い思い出もあれば嫌な思い出もあるのですが、出来る限り時系列に沿う形で列挙していこうと思います。

まず最初に思い出したのが、香港国際空港。僕が留学を決めた際、留学生を専門にする旅行会社で求めた航空券が、この空港を拠点とするキャセイパシフィック航空のそれでした。2008年当時、僕の故郷大阪からロンドンへの直行便はなく、少なくとも東京へ出るか、格安航空券なら一度アジアのどこかで乗り換えるしかないという状況で、僕は迷わず後者のうちの一つであるキャセイパシフィックを選んだのでした。その後も何度かこの航空会社を利用し、その度に彼の空港で乗り換えをしたわけで、トイレに乗換便搭乗口、そして利用出来るコンセントの場所など、お陰で今でもどこに何があるか大体覚えているはず。

当時日本以外のアジアの国に行ったことがなかった僕は、北京語なのか広東語なのかも分からない言語を話す人々の中にいて、自分が完全なる異邦人として存在していることに、ある種のショックを受けたことを覚えています。視覚的に姿かたちが似た人々の中で、これほどまでに疎外感を感じ得るということが、僕には理解出来なかったのでしょう。本当に世間知らずだったんだと恥じ入る限り。

しかし、何度目かにこの空港を訪れた際には、「非アジア的」な部分にも目がいくようになりました。英語もかなり通用したし、通貨も香港ドルという単位。もちろん長くイギリスの植民地であったことも知っていたし、今や中国の一部であるとはいえ、アジアらしくないところがあることくらい想像は容易かったはずですが、いざそういったものを直接肌に感じると、経年によって文化を蓄積する作業の偉大さに深く感動したものです。大好きだったインファナル・アフェアを思い出したりもしたのでした。

何はともあれ、自分の中に内在する文化背景の奥の根幹部分が、少しずつ変化していく感覚がとても新鮮で、それもやはり、慣れ親しんだ土地から遠く離れた場所に身を置くことで、初めて感じられることなのだと。香港は今でも、僕にとってそんな「海外への入り口」のような場所なのです。イギリスからの帰国便で、彼の空港へ降り立った瞬間に浴びた、あのアジア特有の粘りつくような湿気を、僕は今でも忘れられません。

(写真:最初にキャセイパシフィックを使ったときにいただいたボールペン)

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