般若心経

旅行記のような文章を書こうと決めた際、先ず最初に思いつくままにトピックを書き出していったのですが、そんな中でも今回は少し変わった記憶を。

それはロンドンに移ってきて少し経った頃だったと思います。日本人HIPHOPアーティストAMIDA aka EVISBEATSさんの楽曲を動画サイトで何気なくチェックしていたところ、その中に”Impeach The President”のビートで般若心経を読経する楽曲があり、「面白い事をするな」と興味をそそられ、さらにまた別の楽曲では、ミュージックビデオが全編おそらくインドと思われる国での映像で制作されていて、インドは行ってみたい国の一つだったので、より興味深く鑑賞していたのですが、そんな時になんとなく「インド」と「般若心経」が僕の頭の中で瞬間的に結び付いたのです。

そもそもインドは仏教発祥の地。経典や仏像、仏教に関する全てのものは、遥か遠く天竺からシルクロードにのって日出する国、日本に伝わってきたはず。本当にそうならば、あの般若心経だって中国や韓国を通ってきているはずだ。そう思った僕は、早速「般若心経韓国語バージョン」なるものがないか同じ動画サイトで調べてみました。そして、やはり存在したのです。しかも、日本のそれと見紛うほどそっくり。その興奮を胸に、サンスクリット語にチベット語、中国語バージョンの般若心経も聞いてみると、まさに元は一つの経典、もしくは”お釈迦様のお言葉”だったのだと信じられるほどに、よく似ていたのです。さらに特筆すべきことは、各言語に少しずつアクセントがあること。例えば、韓国語の般若心経を聞くと、あべこべな表現ですが、「韓国人のお坊さんが日本のお寺に留学して、日本で学んだ般若心経を唱えてみたが、母語のアクセントが出てしまっている」というように聞こえるのです。

長い歳月をかけて口承されてきた文化と、その悠久の時を心底感じた瞬間でした。また同時に、「音が意味を持ち経典という形で各地に伝承され、そしてその土地土地で言語に昇華していった」のだと、肌で理解できた瞬間だったような気がします。ロンドンにいて、シルクロードの終着地である日本と、まるで繋がっているかのような思いに浸ることが出来たのでした。

(動画:般若心経RAP / AMIDA)

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